カテゴリー「作家気取り」の記事

なぜ私は書いているのか?

北海道の同人活動はまだまだ未熟だという話を聞いて。
北海道には大学がたくさんあって、一サークルとして文芸活動をしている団体も数多く存在しています。
もちろん、大学とは関係なしに同人活動をしている人たちもいます。

けど、何が恵まれないのか何がいけないのか。
なかなか発展していかない。東京の同人と比べたら全然モチベーションが違う。
北海道は巨大な島ですから、変な島国根性というか外へ(市外へ、校外へ、道外へ、という感じ)出ていかないし、ここが一番だというように思い込んでいる。
私は杜の都に住んでいましたから、札幌もいいけど仙台だって札幌ほど寒くもないし歴史もあって美しいまちだと思っているのですが、いくら説明しても「ふーん」としか言ってくれない。
すごく大きな家だけど、ひきこもりなのです。外へ興味が向かない。
みんながそうだとは言いませんよ。あくまで私の周りの人がそうです。

私も文芸活動をするサークルにいますが、最近は幽霊部員と化しています。
ここにいて、それでどうしてクリエイティブになれるのか?部室にこもって書く作品は、上質になりうるのか?
ここにいてはだめだと思い、距離を置いています。
あ、メンバーはみんないい人なので勘違いしないでください。

部室にこもって小説を書き、編集して製本、お互いに批評をしあってそれで「ああ、我々はなんと高尚なことをしているのだろう!悟っている!!」と誇りを持っている。
しかし私には、それがオナニープレイにしか見えないのです。残念ながら。
みんなが書いているのはただのオナニー小説で、編集製本は精液を作ること。批評会は自分のオナニーにみんなをつきあわせること。見たくて来ているモノ好きもいるかもしれませんが…。
そして批評しあいながら精液をかけあい、「気持ちいい!気持ちいい!」と言っているだけの行為にしか見えないんです。
それが嫌になった。それでいいのならいいけど、私はそれだけじゃいけないと思う。

作品を書くと必ず出る話は「キャラの萌え具合」。
話のテンポがどうとか、表現の仕方がああだとか、ありきたりな批評をして終わりなんですね。
でもいいんです。それが彼らにとって気持ちいいから。

キャラへの萌えというのは、それはそれで作品を作る上でのパッションになりうるとは思いますが(二次創作とか)、それだけで果たしてよいのか。
特に私がやっているのは二次創作ではなく完全オリジナルなので、このままじゃいけないという危機感があるのです。

とかなんとか言っていますが、すべて遅すぎました。
気づくのが。もっと早くに気づくべきだった。今のままでは教養も知識も足りなすぎるのに、補う時間がない。
どうしたらいいんだろう。どこかへ解脱したい。

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金平糖の踊り

ここに、乾パンの缶詰がある。氷砂糖も入っている優れものだ。
災害時の非常食として備蓄してあったものなのだが、賞味期限が刻一刻と近づいていた。ちょうど甘いものが欲しいところだった僕は、空けてしまうことにした。
この缶詰はプルトップがついていて、缶切りを使わなくても開けることが出来た。僕はブルトップの穴に指を引っ掛ける。ぐっと力を込める。しかし開かない。意外と固く封がされている。僕は息をとめてもう一度力を入れる。するとぱかっと蓋が開いて、中から何かが飛び出してきた。
なんだろうと思ってよく見てみると、羽根のついた小さな妖精だった。フリフリキラキラのバレリーナのような服を着て、床にのびていた。
「ごめん、大丈夫?」
僕は声をかけてみた。妖精は妙に甲高い声で、
「大丈夫なわけないでしょう? もう少し優しくお開けなさい!」
と叫んだ。

妖精は、金平糖の妖精だった。お菓子の国からやって来た妖精で、そこで女王をやっているのだと言った。僕はお茶を出して、妖精の話を聞いてみることにした。
なぜ、乾パンの缶詰の中にいたのかというと、乾パンと氷砂糖が魔法反応を起こしてこの世界に召喚されたらしい。それはおかしくないかと聞いたら、僕は妖精に怒られてしまった。
お菓子の国は、全てがお菓子で出来ているという。そして、毎日お城でティーパーティーを開いているらしい。
「本当に美しいんですのよ。いろんなお菓子の妖精達が、素敵な踊りを披露してくださるの。紅茶の妖精は……彼らは中国からいらしたのだけれど、愉快な踊りを、コーヒーの妖精はアラビアの踊りを、ロシアからいらしたチョコレートの妖精はトレパックを踊ってくださるのよ」
僕は紅茶を啜りながら話を聞いた。妖精はうっとりした顔をして話している。僕が出した乾パンを両手に持って、妖精はぱくりと齧った。
「まぁっ、なんて固いお菓子だこと! それに、味も悪いわ。これはなんというお菓子ですの?」
「それは乾パンていうんだ。お菓子じゃないよ」
それを聞いた妖精は顔を真っ赤にして怒った。
「この無礼者! 客人にお菓子を出さないでもてなすなんて!!」
「ごめんよ、今家には何もないんだ。乾パンが嫌ならこっちを食べて」
僕は氷砂糖を勧めた。妖精はしぶしぶ氷砂糖を齧ると、たちまち機嫌を良くした。

「まぁ、すっかり長居してしまいましたわ。そろそろおいとまいたします」
妖精は、女王らしく丁寧にお辞儀をした。僕はほっとした。
「それではお礼に踊りをご覧に入れましょう」
えっ、そんなのいいよ早く帰りなよ……と僕が言う前に、妖精は軽やかに踊り始めた。どこからともなくかわいらしい、それでいて不思議な音楽が流れてくる。ひらひらと飛び跳ねるたびに、妖精の周りには金平糖がぱらぱらと散らばった。
僕は、その美しい様子を呆然としながら眺めていた。

最後に、妖精がポーズをとった。その瞬間、しゅっと消え去った。
本当に、何事も無かったのように消え去ったので、僕はこの事実を受け入れることができなかった。
だが、すぐに現実に戻った。床に散らばった金平糖を、僕は掃除しなければならない。

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今までの「作家気取り」では現代物を書いてましたが、あれは自分の中でアウェイ的な作品です。本来私は、こういうファンタジックで寓話的な、そんな話を書きます。
同じサークルの人たちに「現代物とか日常とか書かないの?」と言われたので、ちょっとここで練習してみようという作戦。でもやっぱ無理くさい(弱気)。
こっちのほうが書いてて面白い。ただアイディアを考えるのが大変。

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ホットドックスタンド

「映画でも観に行こうか」
そう言いだしたのは僕の方だった。最近僕も彼女も忙しくて、メールのやり取りはしていたものの、デートなんてしばらく行っていなかったのだ。彼女は快く承諾してくれた。久しぶりに彼女に会える。服も髪も気を使って、家を出たのは良かったんだけど……。

「こういう映画もたまにはいいよね」
映画は最悪だった。ドタバタのラブコメディで、しかも笑いのとり方が下ネタ。僕は失笑しかしなかった。彼女がいなかったら笑ってたかもしれない。とにかく、彼女と一緒に観るような映画じゃない。それでも彼女は気にしないといった素振りだった。
「もっといい映画だと思ってた」
僕は苦し紛れの言い訳をする。ダメな彼氏だとつくづく思う。
それでも彼女は楽しそうにしてくれている。大雑把だけど、細かいことは気にしない。おおらかでやさしい人で本当に良かった。
「ちょっとお腹すいちゃったなぁ」
彼女が言った。僕もお腹がすいていた。
「じゃあ、なんか食うか。……ほら、あそこは?」
僕はホットドックスタンドを指差した。赤と白のポップな店で、看板の文字には黄色も使ってある。サンバイザーをつけたお姉さんが、ホットドックを売っていた。ありがたいことに、近くには座る場所もテーブルもある。僕たちは、そこで軽食を取ることにした。
「たまには、奢ってやるか」
「えっ、いいの?」
ちょっと頼れる彼氏を演じてみる。いつも僕が奢ってあげられたらいいんだけど、なかなかそうもいかない。彼女は、そんないつも割り勘の僕を許してくれている。たぶん。
でもたまにはいいところを見せたい。
「ホットドック二つ」
お姉さんは笑顔で返事をして、細長いパンにタマネギをみじん切りにしたものと、長いソーセージをはさんで、紙の袋に入れて僕によこした。それを彼女に一つ渡し、お金を払う。
「ありがとうございました」
僕が会計を済ませている間に、彼女はケチャップとマスタードの置いてあるところに移動していた。これらは、セルフサービスでかけるらしい。スタンドの端っこに、さりげなく置いてあった。
「先にかけていいよ」
彼女はケチャップのボトルを渡してくれた。僕はホットドックにケチャップをどぼどぼとかける。マスタードも同じようにかけようとした。
「あっ、そんな風にしたら面白くない」
彼女は言った。そして、ケチャップのボトルを丁寧に持って、まるでパティシエが生クリームを絞るようにケチャップをかけた。
ケチャップの上には、4つのハートが綺麗にならんでいた。さらに、マスタードでハートにスマイルの顔を描き始めた。彼女は、真剣だった。
「できた」
彼女のホットドックはすごいことになっていた。半分、潰れている。
「食べてしまうんだから、意味がないんじゃない?」
僕は冷めてしまうような、最低なことを口走った。でも彼女は気にしない。
「こういう遊び心が大事なの」
彼女は得意げにそう言った。安くて不味いホットドックだけど、彼女は美味しそうに食べていた。

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真夜中に……

「もしもし」
真夜中に携帯電話が鳴った。彼からだった。
「もしもし……こんな夜中に、ごめんな」
私は目をこすりながら、目覚し時計を顔の近くに引き寄せた。夜中の2時。
こんな時間に電話してくるなんて、彼らしくない。惚気ているわけではないが、彼はそこまで非常識な男ではない。
「どうしたの。何かあった?」
無意識のうちに心配そうな声が出てしまう。しかし、彼は笑って違うよ、と言った。
「いや、そうじゃなくてさ。あのさ」
「?」
「海、行かないか」
「はっ!?」
繰り返すが、彼は非常識な男ではない。はずだったのだが。
「海って、いつ?もしかして今から?」
「あ、やっぱ困るよね……」
彼は残念そうな声で言った。こんな時間に誘うなんて、何か深い目的があるに違いない。しかし彼が何を意図しているかは、さっぱりわからなかった。一体何を考えているのだろう。
「いいよ。行こう、海」
「えっ、いいの?」
「いいよ。でも、ちょっと時間をちょうだい。支度しなくちゃいけないから」
「わかった。3時ごろには、そっちに着くと思う。車で行くけど、十分あったかくしろよ」
いつも、彼は命令口調になる。でも、不思議と嫌な気分にはならなかった。ベッドから這うようにして起き上がると、顔を洗って目を覚ました。髪を梳き、服を着替え、好きでもないコーヒーを飲みながら、彼を待った。

彼は車の中でずっと黙っていた。私も黙っていた。
彼なりに申し訳ないと思っているのかもしれない。私は、怒りを感じる前にとにかく眠たかったから、そんなに大して怒っていなかったのだけれど。
沈黙を破ったのは、彼だった。
「ごめんね」
思い出したように、謝った。
「いいよ。気にしてないから。なんか楽しそうだし」
「そうか……まだ海に着くまで時間があるから、休んでていいよ」
「うぅん……」
私は、彼の言葉に甘えて溺れるように眠ってしまった。

「着いたよ」
「うぅん……ここどこ?」
「海だよ」
フラフラになりながら、私は車のドアを開けて外に出る。いつの間にか、海の前の駐車場に到着していた。外は、まだ薄暗い。彼に手をひかれるがまま、私は砂浜に向かって歩く。砂に足を取られて、ますます不安定な歩き方になる。
波は、静かに言ったり来たりを繰り返している。彼方遠くが、心なしか明るいような気がする。海には、私たちのほかには誰もいなかった。
「もう少しで朝日が昇るんだ。それを見せたかった」
彼は言った。私は水平線をじっと見つめた。

そっと、音も無く太陽が現れた。
BGMは、波の音だけ。私も彼も、黙ったままだった。朝日が波の上できらきらとまばゆく光っている。潮風が、頬を撫でていく。
「気持ちいいなぁ」
私は呟いた。両腕を上に挙げ、ぐっと背伸びをした。
「そうか、よかった」
彼も背伸びをした。そして、私の頭を撫でる。彼の手はすこしずつ下がってきて、私の顎に添えられた。
「ん……」
彼は私の顔を引き寄せて、そっと唇を奪っていった。潮風が吹いていくように。

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とある喫茶店にて~別サイド~

「うん、いい香り」
そう言って、私の目の前にいる男――小川先輩は、紅茶を一口飲んだ。

私たちは、駅の地下にある喫茶店にいた。ちょっと休もうということになって、目に入った喫茶店に入ったのだった。私も先輩もコーヒーがあまり好きではないために、紅茶を頼んだのだった。
店の中は、そんなに広くは無い。でも、通りに面している壁がガラスになっているので、狭いと感じさせることは無かった。客は女性ばかり。男性は、もしかしたらこの人だけかもしれない。
私は、じっと小川先輩の顔を見る。すっとした鼻立ち、細い顎、そしてきりりと鋭い目。決していわゆる『イケメン』ではない。体は細く、華奢で女っぽかった。それでも私は良かった。自分ではモテないなんて言っているけれど、私は彼のことが大好きだった。

「ん?」
「んっ?いや、何でもないです……」
学年が一つ上の小川先輩とは、大学のサークルで知り合った。知り合った当時は先輩後輩の関係だったので、付き合い始めた今でも私は敬語だった。
今更、敬語を使うなといわれても困る。このままで私は幸せだし、向こうも何も言ってこないので敬語を使い続けていた。
「うん、美味しいですね」
「美味しいね」
静かなひと時が流れていく。

と、その時。かしましい声が聞こえてきた。その中に聞き覚えのある声。
(この声は、藤沢さん?)
藤沢さんとはゼミで一緒で、鈴のような特徴のある声で喋る。本来なら、藤沢さんかそうではないか確認するところなのだが、私は振り返らなかった。藤沢さんが話し掛けてきたら振り返ればいいだけだ。でも本音を言うと、話し掛けないで欲しかった。今は、彼との時間を満喫したい。
私は、動揺を隠すようにお茶を一口飲んだ。幸い、彼は鈍い人だった。

藤沢さんは、友達と一緒にテーブルに着いている。彼女達が入ってきたとたん、店内は騒がしくなった。私も彼も、静かな空間が好きなのに。
藤沢さんのような人が、私は苦手だった。根本的に、価値観が違うのかもしれない。無理に付き合う必要なんてない。
「急に騒がしくなったね」
「そうですね」
小川先輩は、苦笑してティーカップにお茶を注いだ。

昔は喫茶店なんて行かなかったけど、彼氏が出来てから喫茶店によく行くようになり、今ではすっかり慣れてしまった。人前で手をつなぐことも平気になった。最初は照れてしまっていたキスも、二人きりなら簡単にできるようになった。でも未だに、彼の前で服を脱ぐのは躊躇った。
それでも彼は優しかった。決心がつくまで私を待ってくれた。人がよすぎるほどの優しさに、私は惚れこんでいた。

藤沢さんたちは、本当にやかましかった。何やらコーヒーらしきものを飲んでいる。ポットが無いところをみると、紅茶ではないだろう。私に気づいているだろうか。たぶん気づいている。彼氏と一緒だから声をかけなかったのだ。どうせなら、思いっきり見せ付けてやりたい。そんな歪んだ欲望が湧いてくる。
優越感が、私の中にこみ上げてくる。ティーカップにお茶を注いで、紅茶を一口飲んだ。ものすごく美味しく感じる。

ポットが空になっても、私たちはとりとめの無い話をした。普段は、もっと長い時間居座るのだが。
「行くか」
騒がしくなった店内から、出て行きたくなったらしい。小川先輩が、私を促す。もっと見せ付けていたかったのに……とは思うけれど、紅茶も飲み終わったところだしこれ以上いたら店の回転率を下げてしまう。
「行くか」
私は、彼の真似をして言った。

「ここは俺が払うから」
「え、いいんですか?」
「いつも割り勘だからな。これくらいご馳走しないと」
彼は店員に伝票を渡した。この様子を、藤沢さんは見ているだろうか。最後に、奢ってもらっているところをみせつけてやりたい。
――馬鹿馬鹿しい。
くだらない優越感が、突然虚ろなものに思えてきた。私は、何てばかげたことを考えているんだろう。そう思うと、苦笑したくなる。

「よし、行こう」
「あっ、はい」
何事も無かったように、私は振舞った。

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とある喫茶店にて

「あたし、この喫茶店行ってみたかったの!」
私たち4人は、連れ立って駅の地下にある喫茶店に向かった。おしゃれな雰囲気と開放感溢れる店内(全部、雑誌からの情報だ)に憧れて、常々行ってみたかったのだ。
しかし、一人でここに訪れる勇気は無かった。入り口の前にある黒板には、ちょっと値の張るメニューがずらりと書かれている。誰かと一緒でなければ、心細すぎる。
そこでサキは、私たちを誘ったのだった。
「こんなところ、一人では来れないよ」
「私も」
ユミとエリカが言った。私だって、サキに誘われなかったらこんなところに来ることなんてなかったかも。
彼氏がいれば……なんてふと考えた。

「4名様ですね。こちらへどうぞ」
美人なお姉さんが、にこやかに微笑んで私たちを案内してくれた。店内はやはりおしゃれだった。人はまばらに入っているけれど、女の人ばかりだった。お茶を飲みながら本を読む人、パソコンのキーボードを叩く人、女同士2人でお喋りしている人。
その中に一人、見覚えのある姿。
(あれは……大澤さん?)
漆黒の長い髪、華奢な体つき。そうだ、私とゼミで一緒の大澤さん。物静かな人でそんなに目立つわけではないけれど、なかなかにかわいい顔をしている。不思議な雰囲気を持っていて謎めいたところのある人だ。こんなところにいるなんて、思いもしなかった。
声をかけようとして、私はやめた。
女ばかりの店内に、一人だけ男性。大澤さんは、彼氏とお茶を飲んでいた。

「アヤコ、なんにする?」
サキの声にはっとする。
「えっ、あ、私はね、えっと」
「どうしたのアヤコ?」
皆が不思議そうな顔をして私を見ている。
「ごめん、ちょっとボーっとしてた」
皆が笑った。私も笑った。でも、心からは笑えなかった。

大澤さんは、私に気づいていないらしい。彼氏とずっと話をしている。何を話しているかはさっぱりわからない。大澤さんも物静かだけど、彼氏さんもまた物静からしい。
そういえば、大澤さんに彼氏がいるらしいという話を聞いたことがある。でも、あんな大人しい人に彼氏がいるなんて信じられなかった。
ちら、と見やる。大澤さんは静かな声で、でも楽しそうにお喋りしている。

「カフェオレお持ちしました」
ここのカフェオレは美味しいらしい。サキがどこからともなく仕入れてきた情報だ。それぞれ砂糖を入れたり入れなかったり。私は、入れた。
「うん、美味しい」
ユミが言った。私も美味しいと感じた。
大澤さんたちは何を飲んでいるのだろう。テーブルの上にポットが置いてあるけど、何が入っているのかまではわからない。
私は彼氏さんの顔を見てみた。髪は短く、黒かった。目が鋭くて、顎が細い。すごくかっこいいというわけではないけれど、悪くもないな……なんて考える。

それから私たちはずっとお喋りしていた。私はときどき大澤さんのほうを気にしながら話した。大澤さんを羨ましいと感じながら。いや、もしかしたら嫉妬していたのかも。
私たちがお喋りに夢中になっている間に、大澤さんたちは立ち上がってコートを着ていた。この後、どこへ行くんだろう。洋服を見たり、アクセサリーを見たり、大澤さんがねだって何か買ってもらったり、夕飯を食べに行ったり、そして最後に……その、なんと言うか。どこかに泊まったりするんだろうか。
大澤さんの彼氏は、レジの前でお金を払っている。奢ってもらっているんだと思うと、ますます羨ましい。
「あーあ、次は彼氏と来たいな」
突然、ユミが言った。心を見透かされたような気がして、私はひどく慌てた。誤魔化すようにカフェオレを一口飲む。
「え、彼氏できたの!?」
「出来たら、の話だよ」
サキのつっこみにユミは答えた。私たちの中に彼氏持ちはいなかった。
「彼氏欲しいなぁ」
「欲しいねぇ」
みんなが口々に言い出す。私は大澤さんのことを思い出す。もう、すでに店を立ち去っていた。
「アヤコはどう?欲しいでしょ、彼氏」
エリカが聞いてきた。
「うん、欲しい」
「やっぱりそうだよね!」
あはは、と笑う。私もつられて笑った。でも、やっぱり心の奥からは笑えなかった。

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